• 定年男子のランとマネー

社会保障

最近、少し社会保障について考える機会がありました。

社会保障の前提となる、日本の少子高齢化について、今さら考えることは何もないと思っていましたが、慶応義塾大学の権丈教授の書籍を読んで考えが変わりました。

これまで少子高齢化の象徴的な説明は、多くの現役世代で1人の高齢者を支えていた「胴上げ型」の人口構成は、3人で1人を支える「騎馬戦型」に変わり、更に1人が1人を支える「肩車型」に確実に変化していくというものでした。

これに対する権丈教授の少子高齢化に対する解説は以下の通りです。

「所得というパイを何人で生産して、そこで生産されたパイを何人に分配するのか?ということで考えると、最も適切な指標は、一般に言われている65歳以上の高齢者に対する65歳未満の人口比率ではなく、

就業者1人当たりの非就業者の人口である。」

もう少しわかりやすく言うと、

「社会全体で就業者1人当たりが何人の非就業者を支えるかを見ると、就業者一人に対して非就業者は一人で、ここ数十年間ほとんど変わっていないし、将来もあまり変わらない」とのことです。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokuminkaigi/dai12/siryou3-4.pdf

恐らく女性と高齢者の就業者の増加が、高齢化のスピードに追い付いているのでしょう。もちろん就業者1人当たりの収入が低下傾向にあるのならば、非就業者への分配(給付)は減少しますが、就業者数の増加によって支える人と支えられる人の比率が変わらないのであれば、分配は将来もゼロになることはなく安定的に推移するはずです

波平さんの年齢

権丈教授はこのことを感覚的に説明するために、2012年ごろに「サザエさんの波平さんはいくつだと思いますか?」という質問を流行らせました。

1946年にサザエさんの連載が開始されたとき、波平さんの設定は54歳でした。当時の定年は55歳だったので、定年1年前です。でも今ならバリバリ働いている年齢ですね。

権丈教授はこんな質問もしています。

「定年を迎えた65歳の男性は、このあと何年生きることになると思いますか?」

2010年発表の第1回生命表では男性の平均寿命は79.55歳ですが、65歳まで生きた人の余命は83.74歳と見込まれています。つまり定年引退後プラス18.74年です。

因みにサザエさんの連載が始まった1946年時点での55歳男性の平均余命は15.97年でした。引退後の余命としては、2010年も1946年もそんなに変わりません。

統計でみれば、社会の実態は驚くほど変わっていません

僕が社会保障を学習してみたいと思う理由は、もしかしたら今まで常識と思っていたことが変わって見えてくるかもしれないと思ったからです。

学習が進めば続編を掲載します。

参考文献

権丈善一「ちょっと気になる社会保障」2016年 勁草書房


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