• 定年男子のランとマネー

国際政治学者である高橋和夫先生の近著「最終決戦 トランプvs民主党」を読了しました。

高橋先生は、僕の放送大学大学院修士課程の時のゼミの指導教官です。つまり恩師です。

高橋先生の視点はいつもユニークで、先見性に富んでいるのですが、今回の書籍でも、読者にとって刺激的な視点を提供して頂いてます。

書籍の中では、3人の大統領候補、共和党のトランプ、民主党のバイデン、そして撤退したサンダースについて書かれています。

トランプとバイデンについては、それぞれ第一章、第二章を当てておられますが、ユニークな視点としては、すでに撤退したバーニー・サンダースの政治人生と政策について、かなり詳細に言及しておられることです。

現職大統領のトランプは、再選に向けて必死です。

低失業率と高い株価を維持することで、再選を目指していた彼の戦略が、新型コロナ禍で大きく狂わされました。

トランプに呼応して経済活動を再開した州(共和党知事が多いようです)は、一様にコロナ禍の拡大による不安にさいなまれています。

トランプの再選戦略は変換を余儀なくされて、現在は中国叩きに舵を切っていますね。

あたふたする共和党に対して、民主党はどうしているのでしょうか?

現在の情勢は民主党にとって大きなチャンスです。

富裕層や南部に厚い支持基盤を持つ共和党に対して、労働者や低所得者に支持基盤を持つ民主党は前回の選挙で苦戦しました。

苦戦の理由はいろいろありますが、一番の理由は支持基盤である低所得者層が投票に行かなかったことではないかというのが高橋先生の洞察です。

つまり生活に追われる低所得者層が政治を身近に感じられなくて、自分たちの一票が民主党の政策を通して自分たちの生活を改善できるという確信を、民主党が支持基盤の有権者たちに与えることができなかったということです。

どこかの国の野党も同じ事象を起こしていますね。(苦笑)

アメリカの貧富の格差是正と公平さの実現を、草の根活動を通じて、政治人生の当初から訴えてきたのがバーニー・サンダースです。

しかも驚くことに、二大政党制が確立したアメリカでサンダースはほとんど唯一の無所属議員です。彼は、格差と公平さという主張を一貫して行うことで、バーモント州バーリントン市長を1981年から4期、1990年からバーモント州連邦下院議員、上院議員を現在まで続けています。

ちなみにバーモント州はアメリカ東部のカナダ国境にあって、伝統的に共和党の地盤です。

保守的で民主党候補は長い間選挙で勝ったことがなかったのですが、無所属のサンダースはそこで勝ち続けています。

サンダースは大統領選挙参戦の目的を、自身が大統領になるためというよりも、民主社会運動を大きなムーブメントにするためと言っています。

選挙戦からの撤退も、彼の民主社会運動をさらに継続するためと言っており、若者や労働者などから大きな支持を受けています。

自由主義国で共産主義嫌いのアメリカで、社会主義色を標榜することは大変勇気がいることですが、今や民主党候補のバイデンも、その勢いを無視できずに、サンダースの主張を幾分か自分の公約に取り入れることで、サンダース支持層の取り込みをはかっています。

高橋先生はそんなサンダースとその主張にアメリカの未来を見ておられるような気がしますね。

新型コロナ禍に遭遇することで、日本でも各自治体の首長の真価が問われています。

これまでは東京都知事の動向だけが注目されていましたが、新型コロナ禍への対応によって、

「○○知事、寝ろ!(少しは休め)」

「XX知事、寝てないで起きろ!」

「△△知事、そのまま寝てろ!」

などという声が飛び交うことになりました。

このような動きが、地に着いた活動を通じて、地方創生や、東京一極集中是正などの方向に進むと、日本の未来も少しは明るくなるのではないかと思います。


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