• 定年男子のランとマネー

4月12日、FP協会奈良支部の大和八木SGセミナーに参加して、なかのアセットマネジメントの中野晴啓社長のお話を聞いてきました。

中野社長のお話しは、大きく3つのテーマに分かれていました。

一つ目は、資産運用立国化に適した会社

二つ目は、理想のアセットマネジメント

三つ目は、パラダイムチェンジです。

3つのテーマのうち、初めの2つは、なかのアセットマネジメント設立にかかわる話です。

中野さんのご著書である「ほったらかし投資はやめなさい」(宝島社発行)に詳しく述べてあるように、中野さんは親会社との経営方針の対立により、セゾン投信の会長職を解任されました。

資産運用会社代表として、受託者責任の観点から、顧客に寄り添う立場をとる中野さんが、収益拡大の観点から、規模と収益の拡大を追う親会社の経営方針と対立して、結果としての解任です。。

解任の経緯などは、メディアを通じて広く伝えられていますので割愛しますが、個人的に

思い出すのは、私が銀行にいたころのエピソードです。

一つ目は、バブル全盛のころに、銀行は為替ディーリングで儲けていたので、

ある銀行役員が、

「為替ディーラーのリスク許容金額を現在の10倍にしたら、10倍儲かるのではないか?」と、主任のディーラーに言ってきたところ、

「そんなことをしたら、リスク取り過ぎのプレッシャーでディーラーが参ってしまう」

と言って抗議した話。

二つ目は、銀行主導で初めて投資信託を販売したときに、企画部門が一律で高い販売手数料を設定してきたので、少額購入者には販売手数料を低くすることを意見具申したこと。

当時は、「失われた20年」の真っ最中で、インデックス型投資信託を購入した顧客が

儲かるとは思えず、そのうえ銀行の勧めに従って購入してくれる一般の顧客に、富裕層と同じ高い販売手数料を設定することに抵抗した記憶があります。

いずれも、経営目線から収益を最大化することばかりが関心事で、間にいる為替ディーラーという人の負担、投資信託を購入する顧客の損益という人への思いがありません。

これらの思い出は、もう20年以上も前の話ですが、中野さんの話を聞くと、

令和の時代でも、人への配慮を忘れて金儲け主体に考えて経営している人がいることは、

個人的に驚きですね。

中野さんの話の中で、私が聞きたかったことは「パラダイムチェンジ」です。

これについては、セミナーでは時間が押して5分しか時間がなかったのですが、

セミナーの話と、ご著書の内容を考え合わせると、次のようなことになるのではないかと

思います。

1991年ソビエト連邦が崩壊し、冷戦が終了した後に、東西の垣根が無くなったことで、グローバリゼーションが始動開始。

それと同時に、徐々に金融緩和政策が始まり、1990年代には米国でも金利が上がらなくなった。

低金利によって生み出された低インフレは、2008年のリーマンショック後の、さらに

過剰な金融緩和を経て、かつてないほどの過剰流動性を生み、各国の債務残高は増大し、コロナ禍後には米国・日本共に、債務残高が空前の規模にまで積みあがった。

ところが米中対立やウクライナ戦争を契機として始まったブロック経済と、

トランプ大統領の登場による反グローバリゼーションの流れが大きな転換点となって、

低金利と低インフレ時代は終わりをつげ、過剰流動性の回収と高インフレ時代の到来が始まる。

こうした、グローバリゼーション=低インフレから、反グローバリゼーション=高インフレへの転換が、今回の大きなパラダイムチェンジである。

米国民を含む全世界の人々は、トランプ大統領の真意を測りかねている節がありますが、

私の眼には、アメリカに聳え立つ関税の壁と、同じく中国に聳える関税の壁が、お互いの間のスムースなモノの流れを阻止し、あふれ出したモノが、日本をはじめとする東南アジアを

経由して、スピードが遅くなるものの、世界を循環していくように思えます。

お金の流れは、モノの流れとは異なりますが、米中両国間の障壁に妨げられて、お金の

流通速度もモノと同じように遅くなることはあり得ます。

お金は乗数効果で自ら増えていくものとすれば、グローバリゼーションの推進によって

加速度的に増えてきたお金の総量は、反グローバリゼーションによって逆回転し、お金の

総量を減らしていくのではないでしょうか?

お金の総量が減って、足らなくなれば、金利が上がり、インフレになります。

モノの流れが遅くなり、相対的にモノ不足になれば、モノの値段は上がっていくわけです。

私なりに中野さんの言いたいことを推測すれば、モノの価格が上がる中で、価格を販売先に

転嫁して収益を上げられる企業だけが生き残っていく。

なかのアセットマネジメントは、そういう企業だけを見抜いて投資するということかと思います。

つまり、デフレ脳から、いち早くインフレ脳に切り替えた企業・経営者が勝者になると

いうことです。

これは個人のレベルでも同じことで、節約して資産を増やしても、銀行預金に置いておくだけでは、インフレによって目減りするだけなので、パラダイムチェンジ後の時代には、

お金の有効な活用方法を考えることが一層重要になると思いますね。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA