小説を書いている時に、文章を書く練習としてやっていたことの一つに筆写があります。
具体的には、自分が好きな文章を書いている作家の作品を、ノートに丸写しして、文体を
身体で覚えてしまうのです。
私が選んだのは藤沢周平の代表作の一つ「蝉しぐれ」です。
早速文庫本上下2巻を買ってきて、一ページ目から筆写を始めましたが、何分にも
膨大な量で、下巻の途中でフェードアウトしてしまいました。苦笑
ちょうど小説を書くことをやめた時期だったので、しばらく何もしなかったのですが、
そのころのバイト先だったスタートアップ企業の本棚で見つけた分厚いペーパーバック
「20世紀のスピーチ集」を、この会社が解散するときに記念にもらってきて、筆写を再開しました。
スタートアップでは、久しぶりに英語を使って仕事をしていたのですが、冠詞のaとtheの
使い方がよくわからなくて、大量の英文を筆写することで、違いを体得しようと思たことがきっかけですね。
この本は、西暦1900年から2000年までの、英語圏の著名な演説家のスピーチを文章として収録したものです。
セオドア・ルースベルト米国大統領から始まって、チェンバレン英国首相、チャーチル英国首相、ガンジー、マンデラ南アフリカ大統領、フランクリン・ルースベルト大統領、ケネディ大統領、ニクソン大統領、クリントン大統領など、名だたる人たちが、実際に何をどのように発言したかが記されています。
この本を読みたいと思った時に考えたのは、内容にかなり興味があったので、筆写をする
ことで精読したいということでした。
毎朝のルーティーンの中に、この本を開いて、少しずつノートに書き写していく時間を
埋め込みました。
この本は分厚くて、ページ数は525、収録人数は延べ159人(複数回登場含む)です。
この人たちの発言を書き写すのですが、時代背景を調べながら書き写していくと、20世紀の英語圏のリーダーたちの考えていたことが、なんとなく分かってきました。
実に面白い20世紀の旅でした。
「20世紀のスピーチ集」の筆写を終わって、次に取り組んだのは、心理学者である
エリク・エリクソンの「ライフサイクル」です。
この本は、放送大学大学院情報学修士課程で論文を書くときに、参考文献の一つとして購入したのですが、論文に必要な部分だけ読んで、あとはそのままでした。
エリクソンは、人生を8段階(のちに夫人のジェーンが9段階目を加筆)に分けて、それぞれを論じています。
彼はこの本をエッセイと称していますが、フロイトの流れをくむ心理学者が書いた
エッセイは、素人には専門書と変わりません。
使っている単語の意味もそうですが、スペルも長いので、意味を考えながら書き写しているとなかなか進みません。
長いパラグラフでは、三分の一ずつ書き写すなどということも良くありましたね。
そうこうしながら、第一段階の新生児くらいから、なんとか第9段階の90歳近くまで書き写しました。
人生の諸段階について、自身の振り返りも含めて、各段階で考えることができて、良い読書でした。
現在書き写しているのは、ドラッカー著「マネジメント」です。
ドラッカーは、40代から50代にかけて、邦訳はほとんど読み漁りました。
でもドラッカーの文章は、時々最後が桂馬飛びになります。
小説は起承転結、論文は起承結と言いますが、ドラッカーは起承転になることが多く感じます。
将棋に例えれば、歩のつもりで一手ずつ前に進めていた論理が、最後で突然桂馬になって、
斜め前に飛んでしまう感じです。(私だけの感覚かもしれませんが 笑)
これを英語(原文)で読んでみたら、どうなのかな?というのが筆者の動機です。
結論から言えば、英文でも邦文でも同じでした 笑
やはり、わからないものはわからない 苦笑
でも、現在のバイトで、ベンチャーと接する機会が多いので、ドラッカーの書いていることはとても参考になります。
読んでいて面白いし、書いていて楽しいですね。
まだ349ページのうち157ページなので、終わるまでには時間がかかりそうです。
朝の楽しみはもうしばらく続きそうです。