台湾問題についての知見はあまりないけれど、新聞・テレビ・ネットの論調を見ていて感じたことがいくつかある。
第一は、今まで政治的に曖昧にしていたことを、高市首相がはっきりといったことが、中国が反発する原因という意見がある。
確かに、日中国交回復の時に、それまで国家と認めていた中華民国から、新たに中華人民共和国に変更するのは大きな変化だ。
そこに継続性を配慮して、外交的レトリックや曖昧さを残すのは、外交の知恵かもしれない。
しかし、1972年の田中首相訪中から、既に半世紀以上が経過していて、周囲の情勢も
大きく変化している。
最大の変化は、1941年にフランクリン・ルーズベルト米国大統領とチャーチル英国首相の間で合意された大西洋憲章第二条に謳われている、「関係国の国民の意思に反して領土を変更しないこと」という原則が、ロシアのウクライナ侵攻によって、実質的に死文化したことだと思う。
このような大きな情勢の変化に対して、事態の先送り策になる「曖昧さ」がどこまで有効なのかは不透明だ。
曖昧にしておくから、実力行使によって、既成事実を作ろうとする人もいるだろう。
明確化することで、日常は外交の現場から離れている一般国民が、実情を理解しやすいということもある。
(高市首相を擁護しているわけではなくて、一概に悪いことばかりでもないだろうと言っているだけです)
第二は、中国への依存について。
過去に尖閣諸島の帰属権をめぐって、中国が日本へのレアアース輸出を停止した際に、
中国への依存度を下げようとした動きが、その後「のど元過ぎれば、熱さ忘れる」という
格言通りになっているようだ。
日本では、義務教育から「日本の自給率は、ほとんどの物資で極めて低い」と教えているのだから、中国に依存しすぎて怒らせたら大変だと、今更のように騒ぐのは、小さいころからの教えを忘れているか、普段何も考えていないかのどちらかだろう。
過去を振り返れば、原油をはじめとした必要物資の供給を厳しく制限されたから、日本は
対抗手段として、対中、対米戦争を始めたのだから、同じことになりたくなければ、騒ぐだけではなく、冷静に平和的な対抗手段を考えて議論すべきだろう。
第三に、世の中にはいろいろな人がいるということだ。
自分がよって立つポジションによって、いろいろなことを言っているのだろうけれど、日本人である限り、大元の基盤は「日本」であるべきだ。
何を言っても「日本」は無くならないから大丈夫とでも思っていると、数年後には、再度戦争に巻き込まれて、次回は独立を失って、中華人民共和国の日本省か、アメリカ合衆国の
51番目の州になっているかもしれない。
いろいろ言う人は、自分の考えと信念に従って話していると思うけど、子供たちを含めた
発言しない人たちの人生や将来にも配慮して発言するべきだと思う。
今回の高市発言に対する中国の反応を、詳細に分析する能力はないけれど、直観的に
現在、新聞記事によれば、人民解放軍は習近平が指揮する腐敗撲滅政策を受けて、自身の子飼いの
福建閥が粛清の嵐の中にあるようで、指揮官不在の状態では、少なくともしばらくの間は、戦争をするどころの話ではないだろう。
国内経済もデフレに陥る瀬戸際にいる印象なので、如何に習近平に権力が集中しているとはいえ、批判する勢力は大きくなっているのではないか?
むしろ独裁者がハッキリしているから、失敗すれば批判をかわす術がないかもしれない。
トランプ大統領も就任1年未満で、やりたい放題の政策に対しての国内での批判が高まってきていて、高関税政策が最高裁で実質的に否定されることにでもなれば、打撃は大きいのではないか?
米中両国ともに、今は下り坂で困っているのだから、日本は騒ぐばかりでなく、何らかの
交渉の切り札を見つけて、両国を天秤にかけるくらいの力量を示してほしいと願う。