• 定年男子のランとマネー

スペインの住宅バブル崩壊についての考察です。

住宅バブル崩壊

2007年末から住宅購入者・建設業者・宅地開発業者・その他関連業者の債務不履行が急増する。債務不履行の比率は07年の0.6%から09年には8%超になった。売れ残った住宅ストックは09年に90万戸を超えた。

このようにスペインの住宅バブルは07年末から08年初に自壊したのだが[1]、時を同じくしてサブプライム危機・リーマンショックが襲来した。

2012年5月にスペインを訪れたとき新聞・テレビはアルゼンチンのフェルナンデス政権によるYPFの再国有化決定を報じていた[2]。主な理由は、親会社レプソルのアルゼンチンへの過少投資である。

そしてボリビアではモラレス政権が電力送電会社TDE(スペインの電気ネットワーク会社REEの子会社)の国有化を宣言した[3]。こちらもボリビアへの投資が少なかったことを国有化の原因に挙げている。

スペインは反論しているが、住宅バブルが崩壊し、サブプライム危機・リーマンショックの後、満身創痍となったスペイン政府および金融機関には、もはや海外投資を行う余裕はなかったのかもしれない。

これらの事象は、ユーロ導入後に津波のように流入した国外からの資金が、巨大な力で逆流を始めたと仮定すれば、資金の歩留まりが悪いスペインには残骸しか残らないことになる。

EUに加盟し名実ともにヨーロッパの一員となったスペインには、最早自国のみの利害だけで行動することは不可能である。ジャック・アタリは毎日新聞への寄稿でEUの連邦化を提唱し、「なぜ他人のために税金を払わなければならないのか」と主張する人々を「豊かな民族主義者」として懸念している[4]。ユーロの連帯を妨げると考えているのだ。

本節冒頭のガイドの言葉にあるように、一度豊かな生活を享受したものは元の貧しい生活に戻れない。しかし日本の例から考えても、いずれは豊かなままでいる少数と、貧しくならざるを得ない大多数に分別される。

もしもスペインが貧しい集団に分類される懸念が大きいのであれば、良くも悪くも最後までEUと一緒になって行動する以外に選択肢は残されていないと考える。

 

[1] 楠 前掲書 p.218

[2] 船木弥和子 「アルゼンチン:YPF国有化による探鉱・開発への影響」2012年5月17日 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 石油調査部

[3] El Pais  2012/5/3  REE admite en susu cuentas la perdida del valor de su filial boliviana

[4] アタリ 「統合欧州の未来 「ユーロ連邦」で成長を」毎日新聞 2012/5/27

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA