• 定年男子のランとマネー

トランプ大統領

中西輝政著「アメリカ帝国衰亡論・序章」を読みました。

この本で印象に残ったことは下記の2点です。

① アメリカ合衆国は文化的・民族的背景が無い国家で、「世界のみんなが見上げる理想国家を作る」という強い理念を国民が共有することで形成されてきたが、「アメリカファースト」を標榜するトランプ大統領の登場で,

理念が否定され、新しい「孤立主義」に傾きつつある。

これはアメリカの「終わりの始まり」であり数十年後にはアメリカという国が存在するかも疑わしい。

② コロンブスが新大陸を発見して以降、オランダ・イギリス・アメリカと
海の帝国」の支配が続いてきた。

しかしベトナム戦争以降のアメリカの軍事力の相対的低下で、中国やロシアといった「陸の帝国」の台頭によって、500年間続いた「海の帝国」の支配は終わろうとしている。

アメリカがオランダやイギリスの後継者として「海の帝国」を支配するようになったのは1917年に第一次世界大戦に参戦してからです。

それまでは国内にフロンティアがあったことと、建国の理念である「対外不介入」が守られてきたのです。

奇しくも2017年は、1917年から数えて100年目に当たります。

陸の帝国とは?

では「陸の帝国」とはどういうものでしょう?

中国の習近平主席が提唱している「一帯一路」は、中国の西部から中央アジア、トルコ、ロシア、欧州の陸路を結ぶ「一帯」と、

中国沿岸部から東南アジア、インド、アフリカ、中東、欧州の海路を結ぶ「一路」からなります。

つまり古代からの「シルクロード経済帯」と「21世紀海上シルクロード」を合成して、ユーラシア大陸で一つの経済圏を形成しようという構想です。
もちろん日本もこの構想に入っています。

中国版マーシャルプラン」とも呼ばれるこの構想の資金調達のために設立されたのがアジアインフラ投資銀行(AIIB)です。

これらの「陸の帝国」の動きに対して、日本(安倍政権)は基本的に様子見あるいは不参加の模様です

逆さ地図

地政学の本を読むと、「地図を逆さにする」という言葉に出会います。

日本では太平洋側(アメリカ側)から中国や朝鮮半島を見る感覚が主流だと思いますが、地図をひっくり返して中国あるいはロシアから見てみると、日本列島は太平洋に出る前の防波堤に見えます。

軍事的にはここをアメリカに押さえられると、中国とロシアは海ではアメリカと戦えません。

北朝鮮がミサイルばかり飛ばしているのも、「不沈空母」である日本列島を避けるための唯一の方法だからでしょう。

中国やロシアがサイバー技術を高めているのも同じ理由かもしれませんね。

こうしてみると日本列島はミサイル戦とサイバー戦争の最前線に位置することになります

海の帝国の衰退

500年続いた「海の帝国」の支配から、「陸の帝国」の支配への覇権移譲は今後数十年に渡って継続していくとでしょう。

この覇権移譲について中西教授は一つの予測をしています。

幕末の学者である林子平は「江戸の日本橋より唐、オランダまで境なしの水路なり」と論じたことを引き合いに出して、

海は水路で世界が一つに繋がっているので覇権を握る国は一国になるが、

陸は道が多くに分かれて権力は多極化するだろうとされています。

つまり中国だけではなく、ロシアやEUなど大陸に分立する多くの国家や統合体がそれぞれに繁栄または衰退していくことになります。

第二次世界大戦後にアメリカ一辺倒で生きてきた日本にとっては、精神的な面も含めた「独立自尊」を保つ為の国の舵取りが、算数の問題を解くことから高等数学の問題を解くことに変わるのでしょうね。

しかもこの問題には正解があるのかどうかも分かりません。

同化

中西教授は日本の行く末について二つの指摘をされています。

一つ目は「アメリカへの同化」です。

アメリカは国是として植民地を持たない国です。

自由を求めてヨーロッパから逃げてきたのですから当然です。

ではどうして支配を拡大してきたかというと「同化」なのです。

例を出して言うと、ハワイは王国がありましたが、潰されて「同化」されて州になりました。アリゾナやカリフォルニアもメキシコ領でしたが、「同化」されました。

失敗したのは、例えばキューバです。

フィリピンや戦後の日本も同化しようとして失敗しました。(日本は半分くらい成功したかもしれませんが 笑)

中西教授は、今後も衰退する(かもしれない)アメリカに、今までのように付き合っていって「同化」圧力が強まることを懸念されます。

情念

二つ目は、「人の心を動かす力」についてです。

例えば1000年くらい前までは、人は「迷信」を信じて生きてきました。

今でもそんな人は沢山いますが、かつては物事の決定や未来を占う時に呪術師の存在は不可欠でした。

ところが二十世紀になると、人は物質的な豊かさを追い求めました。

豊かさやお金を得るために必死で働いたのです。
西洋と日本のこのような情念は中国を始めとするアジア諸国を大きく揺り動かしました。

しかし今の日本の若い人たちは、もはや豊かになるために必死に働き、必死にお金を貯める情念は衰えているように見えます。

中西教授は、このことを指して「日本は、最も早く、物質的な豊かさを求めて必死に働くという局面を突き抜けた」「超先進国」と喝破します。

つまり日本は世界史的潮流の最先端を走っているわけで、後ろを振り向けば物凄い奔流が押し寄せてきています。

ここを溺れないで泳ぎきるにはどうすればよいかが、これからの日本および日本人の生きる道を決めるテーマになります。

ディール好き

最後に僕のアメリカでの経験をもとにコメントを追加しておきます。

僕がアメリカで不動産融資の不良債権回収業務をやっていた時に、トランプ大統領のような不動産デベロッパーと常にディール(交渉)していました。

僕の感じたところでは、彼らは「理念」や「信念」よりも、「ディール(交渉)」に勝つことが目的なように思えました。

不動産業で成功して「街作りに貢献した」と評される人もいましたが、後付けの評判の感じでしたね。笑

トランプ大統領が、北朝鮮をネタにして、中国との経済的・軍事的な競争に勝つために、日本に対してどのような「ディール」を仕掛けてくるか分かりません。

(中国も日本に沢山の交渉事を吹っかけてくると思いますが)

でも多分トランプ大統領の「ディール」には、多分到達点がないだろうと思います。

一つ一つの「ディール」に勝つことが目的で、そのあとどうするかは考えていないのではないのかという気がします。

もしも彼の「ディール」の終わりがあるとすれば、日本がアメリカに「同化」されて51番目の州になるときでしょうか。

 



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