• 定年男子のランとマネー

10月12日、参加するはずだったセミナーが台風19号の影響で中止になったので、久しぶりに一日読書して過ごしました。

考えてみたのは「アメリカ」についてです。

高橋和夫著「現代の国際政治」を読んでみると、スーパーパワーの定義として

  • Military⇒軍事力
  • Money⇒経済力
  • Media⇒メディア(自らの主張を言いふらす力)
  • Message⇒メディアに載せるソフト。つまりアメリカ文化、生活様式、ファッション等
  • Manpower⇒人材の集中

をあげています。

アメリカがこれらの5要素を兼ね備えていることには異論をはさむ人は少ないでしょう。

しかし、ソ連が崩壊したころに比べたら、アメリカのスーパーパワー力は相対的に落ちてきているに思われます。

原因を考えてみると3つ思い当たります。

一つ目は、アメリカ自身の経済力(2番目のM)の低下に対して、高成長を続けてきた中国との相対比較であり、更に将来的には平均年齢が若くて、当面高齢化の心配がない、巨大な人口を持つインドの影が見えることでしょう。

中國に関しては、アジア地域では軍事力(1番目のM)の相対的低下の懸念もあります。

二つ目の原因はエネルギーです。

アメリカを旅したり、住んだりすると、自動車が如何にアメリカ人の生活に必需品であるか

その他にも、膨大なエネルギーを使って、農業を始めとして、広大な国土を活用しているスケールの大きさに圧倒されます。

アメリカで、これらを動かしているエネルギーの中で石油が占める割合は相当に大きなものです。

アメリカはもともと産油国でしたが、順調な経済発展を重ねる過程で石油の輸入国に転落しました。

そのためもあって、サウジアラビアなどの産油国との関係や、ホルムズ海峡の自由航行などに、自慢の軍事力を使って介入することを繰り返してきました。

ところが、最近は新しい技術の開発でシェールオイルやシェールガスが採掘されるようになり、アメリカは再び産油国の地位に復活することになっています。

自国への石油輸入の心配をしなくてもよくなったことが、アメリカがあまり積極的に国際的な事案に関わらなくなって、その国際的存在感に陰りが出てきた原因でしょう。

最後の3つ目は、アメリカ国内において、

「海外の国での紛争のために、何故アメリカ兵が血を流さねばならないのか?」

という感情が大きくなってきて、

よほどのことがない限り海外での紛争などに積極的にかかわりたくない雰囲気が強くなっているものと推測されます。(1番目のMの低下)

かつて「世界の警察官」を標榜した国の大きな変化ですね。

さて、最近気になっているのは、来年の選挙を控えて、再選を狙う動きが活発化しているトランプ大統領のことです。

トランプ大統領は、メキシコ国境に壁を作って移民の流入を制限しようとする一方で、盛んに北朝鮮との非核化交渉に乗り出して国際社会での存在感を高めようとしているように見えますが、両方の行動に共通する本音は選挙運動にあることが見え隠れします。

日中貿易交渉での駆け引きや、日米貿易交渉での妥結などを見ていると、かなりの割合で選挙キャンペーンの時に自分の実績を分かりやすくアピールするためにやっているように思えてきます。

先ほどのスーパーパワーの5つの要素で言えば、Mediaを通じて自分のメッセージを伝える能力は抜群なのですが、移民を制限することはアメリカの活力の源泉であったManpowerの集中に懸念を生じさせますし、「アメリカファースト」で国内重視が過ぎると、軍事的な抑止力に疑問が生じてくるようになります。

トランプ大統領はビジネスマンで経済に強いのが「ウリ」だと思うのですが、アメリカだけではなく世界経済はどうやら下降基調になっているようですね。 

つまりスーパーパワーの5要素のうち、現在のアメリカには1番目と2番目のMに疑問符が付き、トランプ大統領が更に5番目のMに黄信号をつけている状態ではないかと思います。

折からの日韓関係の悪化によって、北朝鮮のミサイル発射やロシアや中国の日本近海での活動が活発化しているような印象があります。

アメリカが「アメリカファースト」を貫いて、もしも日本近海の防衛の抑止力が低下するようであれば、日本に住む者として考えておかねばならないことが多くなるような気がします。


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