FP相談でライフプランを作成するときに欠かせないキャッシュフローについてネットで調べると下記が見つかりました。
会社にキャッシュ(現金など)が入ってくることを「キャッシュ・イン」、キャッシュが出ていくことを「キャッシュ・アウト」といいます。
そして、「キャッシュ・フロー」とは、キャッシュ・インからキャッシュ・アウトを差し引いた収支のことをいいます。
(出典 https://advisors-freee.jp/article/category/cat-big-02/cat-small-04/7901/)
つまりキャッシュフローとは、元来は会社の決算書などに出てくる言葉です。
私が初めてこのキャッシュフローという言葉に出会ったのは、1987年にスペイン赴任から東京に帰国して、国際金融部門に配属されたときです。
そのとき、私の配属された部門は主にスワップ取引を取り扱っていました。
いまは金融取引でスワップといえば、主にFX取引で通貨の金利差を利用して収益を得ることを指すと思いますが、
もともとは固定金利の債券と変動金利の債券の金利部分だけを交換する(元来のスワップの意味)から発生しています。
ところで固定金利と変動金利を交換するとは、具体的にはどういうことなのでしょうか?
例えば3%の固定金利を持つ債券の金利額を計算して、それに相応する変動金利の金利額と交換することを指します。
私が着任した部署の上司は、いつも長い桁数の数字を計算しては、もう一つの長い桁数の数字と比べ合わせて、部内で長々と議論しては考え込んでいました。
その時の私は、上司が何をしているかがよくわからずに、まるでどこかの研究室に配属されたような気分でした。
その上司が計算していた長い桁数の数字がキャッシュフローそのものです。
その次にキャッシュフローのお世話になったのは、アメリカに赴任して不動産貸付の不良債権回収にあたったときです。
当時担当したテナントビルは50階建てで、貸付額は約150億円でした。
ビルには大小30くらいのテナントが入居していましたが、それぞれのテナントが
異なる契約条件で入居していたため、一つ一つの契約を分析し、毎月の賃料を求め、
各テナントの支払い家賃の合計を計算してから、そのあと10年間の家賃収入を推定していました。
最終的には、この10年間の家賃合計つまりキャッシュフローを現在価値に割り引いて、このビルの評価額を判定するのですが、現在価値に引き戻すために何パーセントの金利を使うことが妥当かなどをよく議論しました。
話を現在に飛ばしますと、FP相談をしていて思うのは、お客様の家計はアメリカで担当したテナントビルに似ているなということです。
FPに相談に来られるのですから、家計が不良債権化しているか、不良債権の兆しがあるかという場合が多いです。
その時にます初めに行うことは、アメリカでやったように家計のキャッシュフロー表を
作成して現実を数字で理解することです。
おそらく昔は家計のキャッシュフローといっても今ほど複雑ではなかったと思います。
今のほうが生き方の複雑さが増し、そして社会の変化に従って国家や企業などの社会保障も複雑化しているからでしょうね。
しかし、キャッシュフローのことだけ考えれば、テナントビルのほうが家計よりも複雑なのですが、
家計にはテナントビルにはない感情というものがあります。
テナントビル向けの不良貸し付けの回収は主に理屈をもとに行いますが、家計の改善は
理屈だけでは解決せずに、ほとんどの場合は家族の感情にどのように対応するかが
課題になります。
これは難しい問題ですが、FPは相談者にとって他人ですから、家族の感情にまで踏み込めません。
しかし反対に他人だからこそ、冷静に客観的に相談者の家計を判断して、アドバイスが
できるのではないかと考えています。