• 定年男子のランとマネー

先日、日本経済新聞電子版で米中関係のライブを放送していたので、申し込んで視聴した。

司会は日経の論説委員で元中国総局長の高橋哲史さん、ゲストは東京財団の柯隆さんと

日経の前中国総局長の桃井裕理さん。

桃井さんのお話の中で面白かった点を2点ほど紹介します。

一つ目は、韓非子の話。

昔ある王様がうたた寝をしているところに、冠係が通りかかり、王様が風邪をひかないように衣を王様にかけた。

後に目を覚ました王様は、衣を掛けたのが冠係と聞いて、2つの処分を行った。

衣係は職務怠慢で相応の罰。

冠係は死罪。

冠係を死罪にした理由は、与えられた職務権限の大幅な逸脱。

つまり支配者は部下が、言われた通りの仕事を、言われたとおりにやることが、誰も自分の地位を脅かさず安心する基本なので、自分で考えて行動する部下は不要との判断だ。

桃井さんは、一般に自分で考えて判断する部下が多いほど、組織は栄えるのだが、独裁者は組織が栄えることよりも自分の保身を優先すると解説。

この韓非子の考えを、そのまま取り入れたのが秦の始皇帝。

歴史も性格も全く異なる六国を切り従えて、韓非子のやり方で統治した。

翻って、習近平も同じことをしている。

習近平政権の第一期目と第二期目は、たくさんの政敵を排除するために自分の配下を要職に配置して政敵を放逐した。

しかし、第三期目は自分の権力が確立したことで、例えば軍のような実働組織にあって、

一期目と二期目で軍の掌握を任せた配下が、三期目では自分と軍の間にフィルターとして入ってくることが許容できなくなって、信頼していたはずの優秀な配下を排除し出した。

何を恐れたかというと、もしも何かが起こった時に、軍が自分ではなく、配下の優秀なフィルター人材の方を向くことが怖いということ。

桃井さんと柯隆さんは、「せっかくの優秀な人材を粛清するのは、国力の低下につながるしもったいない」とコメントしていた。

習主席は、韓非子に従って、排除した優秀な配下の代わりに誰も任命せずに、自分が直接

命令できる体制にしているが、これは一本足打法のようなもので国家の基礎が不安定になっている。

桃井さんが、「秦は統一後に15年で滅びました」と発言した時に、柯隆さんが

「結論が出ましたね」と突っ込んだので、桃井さんは「私は秦の話をしただけです」と

逃げていたのは笑った。

二つ目は、電力の話。

桃井さん曰く、「20世紀は石油の世紀、21世紀は電力の世紀」

第二次世界大戦後は、米国とサウジアラビアによって、エネルギー源である石油の決済は

米ドルで行うことで、米ドルが世界の基軸通貨になり、米国は石油を安全に世界に輸送するためのシーレーンの確保の為に海軍を増強して世界の海を支配する体制が構築された。(ペトロダラー体制)

しかし、21世紀は「電力の世紀」になるとの予測。

生成AIの発達によって世界は大きく変わっていくのだが、その為には膨大な電力が必要。

現在各地に建設されているデータセンターなども、大きく電力を食う。

中国はこれを見越して、EVなど電力社会に大きくシフトしようとしている。

石油社会と電力社会の違いは、石油は生産地が偏って、一極支配が可能だが、電力は基本的に地産地消になるので、分散化と多極化の世界になる。

そのような視点で現在のトランプ政権を見ると、米国の石油生産が大幅に増加したことも関係して、石油支配のための自国の負担軽減を考えるあまり、ペトロダラー体制の根幹を自ら破壊しているようにも思える。

ちなみに、桃井さんの説に対して柯隆さんは、「電力についてはその通りだと思うが、現在の中国の発電は6割が石炭に依存している。国家の方向性と実態の乖離が心配だ」とコメントしていた。

これから当分の間は、石油支配を基にする米国勢力と、電力を中心に考える中国やほかの

グローバルサウス国家勢力の争いになるかもしれない。

しかしながら、米国も電力社会を見越して、米国内への、日本を含む海外からのエネルギー関連投資をすごい勢いで呼び込んでいることを考えると対立がどのような方向に進むのかが分からない(少なくとも私には)。

これらの陣営間の覇権争いが続く間は、石油価格や物価の不安定さも並行して継続しそうな気がする。


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