• 定年男子のランとマネー

2021年1月10日の東洋経済オンラインに早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄さんがこのような文章を書いています。

「日本では、政府の援助に頼って生きたいと思う人はあまり多くいませんが、会社に依存したいと思っている人は、多数います。

私は、そうした日本社会の現状に対して、組織に頼らない生き方が必要だと考え、独立してフリーランサーになって働くことが重要だと述べ続けてきました。

自分の能力を信じて、独立して働ける社会を作りたい。インターネットなどの新しい情報手段が、そのような働き方を可能にしている、他方で、人生100年時代においては、会社だけに頼って生きることは不可能だ、と述べてきました。

しかし、これまで見たように、コロナ禍において、最も大きな打撃を受けたのはこの人たちです。

私がこれまで望ましいと考えていた働き方が、コロナによって無惨に打ち砕かれてしまったことを認めざるをえません。」

コロナで仕事失う人と何ともない人に映る格差 | 野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 (toyokeizai.net)(2021年1月18日閲覧)

野口さんの分析によれば、組織に属して働いている正社員は、今のところコロナ禍でもまずまず雇用を維持されているそうです。

逆に言えば、非正規社員や個人事業主は、業種や人によりますが、相当に厳しい状態にあります。

「日本国民が全体として貧困化している」という認識は、正直なところ強くあります。

それに加えて「日本国民の一般的な生活基盤がぜい弱化している」という認識も感じています。

こんなことを強く感じたのは、先日ご相談を受けたお客様のお話をお聞きした時です。

FP協会の紹介でしたが、70歳代の男性で年金の相談をしたいとのことで不思議に思いました。

70歳代ならばすでに受給開始しているはずだし、年金の個別の相談ならばFPではなくて年金事務所か社会保険労務士に相談するべきです。

そう言ってお断りしましたが、どうしてもということだったので電話でお話ししました。

お話はこういうことでした。

「自分の年金受給額がとても少ない。妻よりも少ない。

これはおかしい。

どうやら過去に勤めていた会社が、従業員から集めた社会保険料の一部しか保険料として国に納入しなかったためらしい。

会社はすでに倒産したのだが、国に監督責任があるはずだ。

当然もらうべき年金額を自分で計算したので、正しいかどうかを検証してほしい。」

このかたは、大病を患っておられて言葉がやや不自由なようですが、奥さまの助けを借りて、各地の年金事務所などを訪問して同じことを聞かれたようです。

そして気の毒なことに、ご本人によれば、どうやらクレーマー扱いを受けたようでした。

「国は信用できない」

ということでFP協会に連絡され、FP協会は私を紹介したようです。

(FP協会に確認していないので、どのような経緯かは不明です)

お話をお聞きして、法律上では、年金額の個別計算業務は社会保険労務士しか受けられないので、社労士を探してくださいとお答えしました。

ところがこの方は社労士の存在をご存じなかったのです。

「社労士というのは国の機関か?国は信用できない!」

「いえ、会社組織や自営でやっておられる方が多いですよ。近くの社会保険労務士事務所を検索して、ホームページに年金に強いと書いてある事務所に聞かれてはいかがですか?」

「ありがとう、社労士は知らんかった。あんたに相談料は払う。新しいことを教えてもらったから」

「いえいえ、お話を聞いて社労士を教えただけですから、FPとしての仕事はしていないので無料で結構です。ただし社労士への相談は有料ですよ」

「構わない。相談したらお金は払う」

話はそれで終わりましたが、これまでたくさんの人に相談したのならば、社労士の存在くらいは誰か教えてあげればよかったのに・・と残念でした。

日本の社会保険制度は会社に依存するところが大です、

所得税、年金保険料などは、給料からの天引きという形で、会社が国家の事務を代行しています。

お話した方のケースは、会社と従業員の「信義原則」が壊れてしまったケースです。

コロナ禍で資金繰りが厳しくなる会社の中には、これからも似たようなケースが

出てくるかもしれません。

とはいっても、国家にどこまで管理監督の責任があるかは分かりません。

監督義務はあるでしょうけれど、何をどこまでやれば責任を果たしたことになるのかは、裁判でもやらないと判断が出ないでしょうね。

私たちにできることは、国民の知る権利を使って、例えば年金記録を閲覧することや、収入から税金や社会保険料の概算額が分かるようになることでしょうか?

そのためには、ある程度の社会保険制度の基礎知識と学習の継続が必要になります。

学校で習った知識を、各個人が継続的に学習・・・できれば良いのですが、

学校の勉強が嫌い・・

忙しくてそんなことやってる時間がない!

という方も多いでしょうね。

昨今の社会情勢では、自営業はもとより会社員でも最低限の社会保険の知識を身に着けていないと、私がお話した方のように老齢になってから苦しむことになりかねません。

年金などの社会保険について大抵の方々は、よく知ってそうな友達に聞く・・という手段をとっておられるようですが、制度自体が複雑でかつ毎年のように改定され、当てはまるかどうかも人によって異なります。

そうであれば、努力して継続的に学習している、信頼できる専門家を見つけておいて相談するほうが、結果的に安上がり(損害が少ない?)ような気がします。

病気の時は「かかりつけ医」と同じように、「お金や社会保険のことは、まずかかりつけFPに聞いてみる」のような世の中になればと思いますね。



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