• 定年男子のランとマネー

水木しげるの漫画に「一番病」という作品があります。

話のあらすじは、こんな感じです。

江戸一番の「カンオケ屋」徳兵ヱは、嫉妬心と競争心が異常に強く、寺社奉行から

「カンオケ賞」の審査員を依頼されたことで、自分が日本で一番のカンオケ職人だと、

自負の笑い声をあげる。

弟子の幸吉が「先生がいい年をして、ああして何でも一番になることを好まれるのは

いつ頃からなんですか?」と聞くと、馬面の奥方がこう答える。

「なんでも寺子屋で先生にほめられたのが病みつきになって、くそ勉強したらしいのよ。

そうしたらなんかの間違いで優等生になったのが悪かったのねえ。

それからなんでも優等生でないと気が済まなくなったらしいのよ」

中略

「自分が日本一のカンオケ職人だ、カンオケ界の王者だという自負心が、一か月に三百個の

カンオケをつくらせるのでしょうねえ」

(出典 久坂部羊 著 「冴えてる一言」)

水木しげるといえば「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズが有名ですが、私が小学生の頃に耽読した

少年マガジンや少年サンデーには、戦争ものの漫画も連載されていました。

水木さんご自身が、第二次大戦中に南方のニューブリテン島ラバウルへ出征し、爆撃で左腕を失い、マラリアに倒れて九死に一生を得ています。

自分の近くで、戦友たちが次々に死んでいく体験をしたことから、鬼太郎も「墓場の鬼太郎」の名目で連載していた当時は、絵にも暗く悲惨な影があったと記憶しています。

水木漫画の特徴には、人生の墓場をさまよって、人間の裏の裏まで味わい尽くした作者の

透徹した感性が感じられます。

冒頭の「一番病」という作品からも、何でも一番にならなければ気が済まない徳兵ヱの

異常さが伝わってきます。

必死になって一か月に四百個のカンオケを作って倒れこんだ徳兵ヱに、奥方が心配して

「もうやめたらどう?」といっても、徳兵ヱは「うるさい!!」と言って、カンオケを

作り続けます。

弟子の幸吉は奥方に、

「奥さん、先生はご病気なんですよ。一番病 あるいはエリート病

あるいは征服病といってもいいかもしれません」

奥方は、

「でも、あんなに苦しんで」と心配そうに言いますが、

幸吉は、こう答えます。

「いや あれは本人にとっては苦しみじゃないのです。先生の最大の楽しみなのです

だって あんなにがんばれる。それは心にハリがあるからですよ」

「一番病」はビョーキ

何事も熱中しすぎると「ビョーキ」になるということですね。

会社員時代に必死で仕事をしていたころは、私も徳兵ヱのような「一番病」だったと

思います。

幸か不幸か、自分が一番にはなれないとわかってからは、一日を「仕事時間」「自分時間

(家族含む)」「睡眠時間」の3つに分けて、「睡眠時間」の確保を最重要視する生活に切り替えました。

それでも昔の癖は残っているようで、トレイルランニング大会などでは、順位は目指しませんが、自分が設定した目標時間やペースを頑張って守ろうとしてしまいますね (苦笑)

それで達成感を味わって、一人で悦にいっているわけですが、時々、自分はスポーツを楽しむためにやっているのか、それとも苦しんでも達成感を得るためにやっているのかがわからなくなる時があります。

今のところ、睡眠時間を削ってまで、トレーニングをやっていないので、しばらくは

これくらいのペースで続けようかと考えています。



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