9月28日から3回にわたり、大学のシニアコースで米国の国際政治の授業を行うので
今回の米中首脳会談を踏まえていろいろと調べて考えた結果を纏めてみた。
まず米中首脳会談そのものについては、具体的な成果は無く、米中関税戦争停戦の2か月延期を受けてAPECまでの期間に水面下の交渉が行われるだろう。
しかしながら、習近平主席夫妻をトランプ大統領御夫妻が空港のタラップの下まで迎えに行った映像が全世界に流された時点で、習近平主席は得るものを得た、つまり偉大な中国を前に米国が平伏した図柄を全世界に流し、中国国内での自身の権威を高揚させ、習政権第4期への大きな政治サポートとなったと思う。
(トランプ大統領にとれば、中間選挙前で苦しいので、下手に出て習主席の機嫌を取れば
今後のディールに有利と思ったのだと思うが、本人が考えるより米国の失ったものはかなり大きい)
米中の課題はいくつもあるのだが、大きなものとしてはAI規制と台湾問題。
AI規制については、インターネットを国家が厳重に監視してきた中国共産党としては、AIに付いても同じように厳重に監視したいだろう。
AIが勝手に暴走して、管理不能になって共産党政権を揺さぶっては困るからだ。
しかしそれでは「管理下の開発」となってしまい、開発競争に不利になるので米国をまきこんでルールつくりを行うことを目論んでいるだろう。
台湾問題に関しては、戦後の歴史を振り返ってみれば、米国のアジア関与はジリジリと
後退してきたといえる。
朝鮮戦争で北朝鮮を何とか食い止めたが未だに停戦状態。
ベトナム戦争では北ベトナムの侵攻を止められず、ベトナムは共産主義国になった。
台湾に関しても、レーガン政権時に「台湾への武器売却は事前に中国に相談しない」と決めて、中国との交渉のテーマにしないとしてきたが、トランプ政権はあっさりとその決定を破って交渉の材料にしている。
最近の国防総省の資料では、米国の防衛線は(中国が言う)第一列島線とすると記載してあるようだが、仮に米国が第一列島線までしか守らないとなると、台湾・韓国そして尖閣諸島は米国から見て第一列島線の向こう側になってしまう。
現実に日本近海の防衛を見てみれば、2025年春には横須賀を中心に3隻の米国海軍空母が
日本近海に就航していたが、現在はイラン戦争で中東に派遣されて空母ゼロとなっている。
一方中国は台湾を包囲するような大掛かりな軍事演習をたびたび行っている。
台湾は原油などのエネルギー資源の備蓄が少なくて、1か月でも海上封鎖すれば電気も付かない状態になってしまうようだ。
中国の台湾進攻は、なにも武力侵攻に依存しなくても、この兵糧攻めで台湾内部が自己崩壊して中国共産党政権を自主的に迎える機運を作ればよいのだから、台湾包囲網が完璧に作れると分かれば実行する可能性は大きい。
問題は、中国がこのような形で台湾侵攻を行った場合に、この包囲網を米国および日本が破って資源を台湾に運ぶかどうかだが、現在のトランプ政権を見ていると米国大統領が中国国家主席に平伏しているようでは心もとない。
この懸念が台湾の内政に与える影響は大きいと思われる。
現在のトランプ大統領は、中間選挙での勝利を諦めて開き直ってしまい、選挙で民主党が勝利すると内政はお手上げになるので。残りの任期に自分のレガシーを外交で残したいと考えているようだ。
レガシーとして考えられるものの一つが、北朝鮮の金正恩との対話(核開発問題?)。
もう一つがキューバ政権の転覆。
いずれも過去の大統領が成し得なかった業績だが、もしもトランプ大統領がこれだけに集中すると、現在のインフレ・高金利などの内政問題の解決は後回しになって、残り任期2年間のうちに米国発の不景気と株式の暴落が懸念される。
一方の中国にとってのレガシーは台湾侵攻だ。
建国の英雄である毛沢東、国家発展させた鄧小平とならぶレガシーは、習近平の台湾統一になる。
それも台湾が中国共産党を無血で迎えてくれれば、習近平の名声はいやでも高まる。
この図式での日本の対応は、中国との対話は不可能で、米国が頼りにならなければ、自国の国力と防衛力を高めることが優先課題に思える。
高市政権は、トランプ大統領の米国を上手く利用して、ほかのミドルクラス国家群との
連携を強めて中国の拡張に対抗していくことになる。