10月23日、FP協会セミナーで藻谷浩介氏の講演を聞く機会がありました。
講演の主題は、誰かの言うことを信じるだけではなくて、自分で数字を見て確認せよということだったと思います。(若干怪しい理解ですが 笑)
数字を見て事実を理解してから、自分自身の考えを組み立てるというのは、ハンス・ロスリング著「ファクトフルネス」にも書いてあったことです。
私が大学院修士課程のゼミに参加していた時も、論文の根拠は出来る限り一時資料に当たるように指導を受けました。
藻谷さんは地域エコノミストとして、日本全国の市町村をフォローしているそうです。
そんな藻谷さんの地方に対する結論は、日本の地方は高齢化を乗り越えた、ということです。
高齢者は増え続けているし、少子化は止まらないのですが、日本全体の制度として、人口のピークが過ぎて人口減少が加速していくということは、これ以上の高齢化施設は不要で、
これからは現状をピークとして対応していけばよいということだと思います。
これから楽になるのは、高齢化のピークを越えた地方都市であり、東京や大阪などの大都市は高齢者の生活支援負担で財政が厳しくなっていくのではないかという問いかけのような気がします。
藻谷さんがインドで講演した時の話は、なかなかに興味深かったですね。
インドは人口が多くて、国民の平均年齢が若いので今後のさらなる成長が期待される国です。
いずれはGDPで米国や中国に迫るとも言われています。
この若くて強い国で藻谷さんが講演したのは、高齢化社会日本との人口構成比較です。
若い人が多いインドと高齢者が多い日本を、棒グラフで重ねると対称的な図になります。
しかし、藻谷さんが1970年の日本の人口構成を現在のインドの人口構成に重ねると
2つのグラフはほぼぴったりと重なります。
つまり55年後のインドは日本と同じ人口構成になっているのです。
その時までに、インドは膨大な高齢者を支えることができる社会になっているだろうか?
これが藻谷さんの講演を聞いたインドの人たちの反応だったようです。
もう少し世界を眺めてみると、インドよりももっと高齢化社会に恐れを抱いているのは
おそらく中国です。
長期にわたり高度成長を遂げてきた中国も、現在は低成長期に差し掛かっていますが、
どうやら社会保障はいまだ手薄なようです。
年金などは、主に地方政府が負担するようですが、不動産バブル崩壊以降、地方政府の財政はかなり苦しくなっています。
また、公務員・国有企業退職者と民間企業や農民などの年金格差も大きいようです。
今後低成長経済が継続すると、地方政府の財源がますます苦しくなって年金財政への影響が出てきて、農民への低年金で生活が苦しくなって、社会が不安定化する懸念があります。
過去3000年の歴史が、再度繰り返されるかもしれません。
米国をみると、最近の反移民政策は、短期的には米国民の職を維持するためですが、長期的には増大していく高齢者に対するサポートへの不安があります。
現在の見通しでは、現行の体制が続けば年金の財源枯渇によって、2034年ごろに
年金額の23%カットが予測されています。
年金財政の不安を考えると、社会保障制度に入らない不法移民は排除したいと考えるのも頷けるところです。
藻谷さんは、日本社会が高齢化を乗り越えたからといって、決してこれからの日本はバラ色だと言っているわけではありません。
他の国がこれから越えなければならない困難を、何とか乗り切ったという自覚をもって
日本を取り巻く数字をしっかりと検証しなおして、これからの日本の国家政策、そして日本人一人一人の生き方を考えるべきだという主張です。
FP協会の研修だったので、相談業務を行うFPの心構えとして講演されたのですが、
私にとっては、改めて統計などを見る観点を、例えば率から量へ変えてみるなど、とても
参考になり、かつ示唆に富んだお話でした。